ダイバーシティ

ダイバーシティ&インクルージョンについて色々思ったことを書いたブログ

ぼくの人生観を変えた配属 2

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 それから、縁あって2007年1月からダイバーシティ専任マネージャーとして人事本部に配属され、会社のダイバーシティ代表として、外部と接する機会が格段に増えはじめた。

 着任早々のある日、内閣府男女共同参画局から電話があった。その内容は、2月から立ち上げる「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)専門委員会」の専門委員になって欲しいと言う依頼だった。

 本来ならば、人事本部の代表が担当すべきだと思うのだが、当時の人事本部長に相談すると、「ボクは韓国人なので日本語が話せないし、キミが会社のダイバーシティ代表なんだから、キミが行くべきだ」とあっさり言われ、ぼくが会社の代表として内閣府の専門委員会に参加することとなった。

 不安を抱えながら、永田町にある内閣府の門をくぐり、会議室に入ると、いきなり「〇〇先生、こちらにお座りください!」と官僚と思しき方に座席を案内された。ぼくは後ろを振り返り「誰の事?」と道を開けたが、どうやらぼくの事を「先生」と呼んでいることが分かり、背中がぞくっとしたことを覚えている。

 会議室に入ると16名の委員が、神妙な顔をして席に座っており、後ろには官僚と思しき人々(所謂事務方?)が色々と打ち合わせをしていた。委員には連合や経団連などで要職に就かれている方々や、経済評論家の勝間和代さん、ワーク・ライフ・バランスの取組みで有名な小室淑恵さん、大人の脳ドリルの川島教授など、錚々たるメンバーの方がおられた。企業からはぼくの会社(正確には勿論「ぼくの会社」ではなく米国の大きな多国籍企業だが、都合上…)の他には、大手電機メーカーと東北地方の柔軟な働き方を展開し人材を育成されておられる中小企業の3社だけだった。

 第2回の会合で、企業事例の発表で、前述の3社がワーク・ライフ・バランスの取り組みを15分ずつ説明することになった。その発表の後、帰りのエレベーターで勝間さんと一緒になり、少し話したのだが、その時彼女は「電機メーカーさん(仮にA社とする)は制度が優れているが、あなたの所は企業理念の徹底に力を入れており、制度はそんなにすごくない(ギクッ!)が、制度が取れる環境がありますね。あと管理職の評価にダイバーシティの貢献をいれている。A社は入れていない。ボランティアでは環境は変わりませんよ」と私に感想を話してくれた。ぼくは、「あのたった15分のプレゼンでこれだけ鋭く本質を見抜くとは、頭が切れるな」と唸った事を覚えている。

 このような経験だけじゃなく、その会社は、ぼくに対して様々な機会を提供してくれた。配属されてたった一ヶ月のぼくに、「キミが会社のダイバーシティ代表なんだから、キミが内閣府に行くべきだ」という、あっさりとそして徹底した権限委譲が、それを物語っている。

 結果として、その権限移譲からぼくは沢山のことを学び、そこで発信することにより、会社と社会に少しは貢献できたかもしれない。

 その会社の行動原則(プリンシプル)のひとつに、「会社と個人の利害は分かち難いものです」というのがあった。私見だが、会社が個人の成長を促す機会を提供し、その機会を得て成長した個人が会社や社会に貢献する仕組みが理想だと思う。人生の多くの時間は仕事をしているわけだから、その仕事の時間が充実していれば、人生も必然的に充実するし、充実した人生を送っている人は、仕事も充実しているはずだと思う。仕事がオンでそれ以外がオフでははく、どちらもオンである人生を送っている人が、真の充実感を得ることが出来るのではないかと思ったりする。

 ワーク・ライフ・バランスとは、時間のバランスをいうのではなく、その充実度合いのバランスをうまく取れている生き方であるべきだとぼくは思う。

<次回へ続く>