ダイバーシティ

ダイバーシティ&インクルージョンについて色々思ったことを書いたブログ

ダイバーシティ・ マネージャーとしての活動

    営業本部でダイバーシティ・採用・トレーニング担当マネージャーとして2年半担当後、初代のダイバーシティ・マネージャーKさんが会社を退職され、独立されることとなり、異例ではあるが、後任として人事統括本部に異動し、ダイバーシティ・マネージャー(北東アジア担当) となった。

    営業本部から異動することも異例ではあったが、男性が会社のダイバーシティ・マネージャーとなることも異例であった。

   社内的には、北東アジア(日本と韓国)で立案されたダイバーシティ戦略のアクション・プランを確実に進めていくことや、各本部別の進捗状況の管理や経営者会議でのレビューなどの活動や、毎年6月をダイバーシティ強化月間とし、その中で行われるフォーラムの準備などを行った。また、毎月グローバルでのダイバーシティ・マネージャーの電話会議への参加があった。これは時差の関係上いつも夜に行われた。

    社外的には、以前のブログにも書いた、内閣府の「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)専門委員会」の委員と、神戸市男女共同参画審議会の委員も任命されたので、そちらへの参加や、行政や学校から講演依頼などがあった。全てお受けすることはできなかったが、時間の許す限り、会社のダイバーシティの取組みに関して、少しでも参考になればと思い、僭越ながらお話をさせていただいた。 その頃、日経ウーマンで「女性が働きやすい会社100」という特集があり、2回続けて1位にランキングしていただいたこともあり、取材の依頼が多くなった。広報本部(エクスターナル・リレーションズ)にダイバーシティ関連の担当者がおり、一緒に仕事をする機会が多かった。

    また、関西の企業が集まってダイバーシティを勉強するネットワークがあり、そちらにも参加させていただいた。活動内容としては、月に1回集まって、ダイバーシティの担当者として、抱えている問題などをテーマ(例:女性活躍推進に積極的でない管理職の意識を変えるには?)にしてグループ・ディスカッションで色々なアイデアを出し合って発表したり、各企業がどんな取り組みをしているか紹介しあったりするものだった。 いつも20〜30社位参加されていたように記憶している。

    背景の違った企業の人事担当者が集まってディスカッションすることは、まさにダイバーシティを実感できる機会であり、参加していてとても刺激があった。

<次回へ続く>

 

営業本部でのダイバーシティ推進活動 8

 営業本部での活動として、ネットワークの活性化やメンタリング・プログラムの開始など、色々新しい取り組みを行った。それなりに効果を発揮したものもあったし、すぐには芽が出てこない活動もあった。

 その中で一番印象に残っている活動として、「営業本部ダイバーシティ・フォーラム」が挙げられる。これは、女性社員とその上司を対象参加者として、丸2日ダイバーシティに関して考えるというフォーラムだった。総勢100名を超える参加で、男女比率は約半々だった。

 本部長の強いサポートもあり、組織も本人も無意識に眠らせている女性の能力を最大限発揮させるために何ができるかプランを練った。プログラムの内容は代替下記の通りだった。  

米国本社の女性ディレクターのスピーチ
彼女も若い頃ロールモデルが身近にいなかったが、グラスにあと半分しか水が残っていないのか、まだ半分も残っているのか、物事の見方で行動は変わる。前例がないからと諦めるのではなく、前例がないから、初めてのケースになれると前向きに捉えるのか、聴いてて元気になるようなエピソードを語ってもらった。
 
日本の他部署の女性ディレクターのスピーチ
営業本部は女性が少なく管理職も少ないが、他の部署では既に多くの女性が活躍していた。その中でマーケティング本部の女性ディレクターに、夫婦間での分担や、子育ての工夫、上司とのコミュニケーションのコツなど語ってもらった。
 
パネルディスカッション
前述の米国本社の女性ディレクター、米国本社の営業本部の人事部長、日本の営業本部長などにダイバーシティの重要性や具体的な米国での活動やリーダーの本気度など語ってもらった。
 
分科会(トレーニング、ワークショップ)
女性社員、女性社員を部下に持つ上司の2つに分けて、トレーニングやワークショップを実施。
女性社員のワークショップでは、会社の柔軟な働き方の制度、評価制度やワークプランの意図や仕組みを詳しく説明したり、色々な質問に人事部が答えたりした。 一方、上司のトレーニングでは、女性の部下との接し方で、実際何を困っているのかグループディスカッションで全部出してもらったり、個別面談のロールプレイをしたり、コミュニケーションの質を高めるトレーニングを行った。
 
昼食会(ランチセッション)
いろいろな部署(法務、ファイナンス、購買、工場など片っ端から)の女性管理職に来てもらい、ランチタイムにテーブルごとに入っていろいろ話をしてもらった。これがきっかけとなって後日メンターになってもらった人もいた。
 
 2日目の夕方、分かれていた参加者が一堂に集まり、本部長が最後にまとめのスピーチをしているのをぼくは会場の端っこで眺めていた。
 ぼくの目の前には、10人ずつのテーブルが10卓、それぞれ男性と女性がほぼ同じ人数で座り、女性が隣の同僚と自然な微笑みを浮かべながら上司と話をしていた。
 採用した時は活発だったのに、久しぶりに会った時とてもおとなしくなっていて、本社にいてもあまり評判が聞こえてこなかった入社2年目の女性が、本部長のスピーチの後、手を挙げて100名を超える会場で発言をした。今回のフォーラムに関する前向きな感想だった。
 ぼくは、隣で一緒に眺めていた、営業人事部の女性に「こういう環境になるのが理想やねん」とポツリと呟いたのを憶えている。
 「女性が多くて、活気があっていいな」なんて、そんな気持ちや満足はこれっぽっちもなかった。
 男性がどうとか女性がどうとか、そんな事誰も考える必要がなく、ただ一人ひとりの個性に注目し、期待しているそんな環境…。女性の誰それじゃなく、一人ひとりが個性を存分に発揮している環境…。
 ぼくのビジョンが、明確になった瞬間だった。
<次回へ続く>
 
 

営業本部でのダイバーシティ推進活動 7

 

  その時考えた事を書いていこうと思う。

  まず、「女性に焦点を当てる」ということは、女性が男性と同等に活躍できる環境を実現する事であり、女性に下駄をはかせることではない。

 新卒の採用をしていると毎年思うのだが、男性と女性の学生で、性別による差はない。どちらかと言うと女性の方がしっかりとしている印象を感じる事が多かった。結果的に、当時は男女の採用比率はほぼ半々だった(女性の方が多い時もあった)。翻って社内を見ると男性が9割程度を占め、管理職の比率はも男性の方が明らかに高かった。もっとも20~30代では女性の比率は30%台だったと記憶しているが、それでも女性の定着率は男性に比べると低い状態だった。

 入社時は男女差がないのに、なぜ数年経つと昇進の比率や離職率などに差が出てくるのだろうか?

 理由はいくつか考えられる。彼女達が独自の価値観で会社を辞める事を選んだり、プロモーションに価値を置かないのであれば、それはそれぞれの人生観なので尊重されるべきで、そこにまで踏み込むことは無いと思う。

  しかし、当時ぼくが気になったのは、アンケートなどで、会社でのキャリアや昇進に関して興味がありますか?的な質問をした時に、「イエス」と答える比率は男性の方が明らかに多かったのは想定内ではあったが、女性は「イエス」と「ノー」の間の「どちらでもない」と答える比率が男性に比べて非常に多かったことだった。

 察するにロール・モデルもないし、詳しいことを相談する相手や機会がなかったので「よくわからない」のではないか?あるいは結婚したり、子供が生まれたり、夫が転勤になったらと考えると、「よく分からない」ではなく、将来のキャリアなんか考えても仕方ないと半ば「あきらめている」のではないのではと思ったりもした。

  同等の機会を提供するということは、どちらかが、自然にできる事を、一方ができない状況が存在するのであれば、それが自然にできる環境に意識的に開発していくということなのだ。その活動の一端だけを見ると、女性ばかりなぜ?となるかもしれないが、今迄無意識のうちに形成されていた環境を、取り組めば人材という資源を有効に活用できる機会として捉えれば、会社としてアクションを加える事は、他社がやっていないのであれば尚更、競合優位性を産み出す効果的な戦略となるのではないだろうか。

 ワーク・ライフ・バランスや柔軟な働き方を戦略に入れて、会社としても効果的な解決策を機会として考えるべきだし、ネットワークの構築やメンター制度なども同じである。それだけでなく、組織として、無意識であることに関して意識するよう理解を深める機会を積極的に作らなければならない。

 一方で、会社が全て解決できる訳ではない事も実状として認識しておかなければならない。日本の風習と言うか、例えば家事や育児は女性がする的な事が原因であるならば、それは行政や社会が考える必要があるかもしれない。

 自分たちが会社組織としてできる事は何なのかを考えて、できる事を粛々と進める事が大事だと思う。

 

 

<次回へ続く>

 

営業本部でのダイバーシティ推進活動 6

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 戦略が決まり、上級管理職会議にて承認を得ると、いよいよ活動の開始となった。

 活動を進めていく上で注意したのは、打ち上げ花火みたいな感じにしないことだった。「最初は威勢がよかったけどその後どうなった?」的なプロジェクトをたまに見かけるが、今回のダイバーシティ推進戦略は、長い旅の始まりなのだ。

 そこで、軌道に乗せる為に、ニュースを継続的に発信していき、毎月なんらかのダイバーシティに関するトピックが発信される様にタイミングを工夫した。

 最初の月はダイバーシティ戦略に関する説明や今後の活動に関しての本部長からの発信。次の月はウーメンズ・ネットワークの開始、その次は社内メールを活用したダイバーシティ・ニュースの発信、その次はメンターシップ・プログラムの開始、グローバルで既に存在する女性リーダーが日本に来る時に話す機会を彼女に経験を話してもらうセッションの開催など、何らかの活動やイベントを毎月実施することで、社員の認知や興味を高めていった。また、折に触れて営業本部長などからもダイバーシティに関する話をしてもらうことによって、会社や営業本部が本気でダイバーシティに取り組んでいることを、肌で感じてもらう様にした。

 一方で、認知が高まり、組織内でダイバーシティに関する話題が増えれば、その分反対意見やネガティブな反応があったのも事実だ。

 「女性ばかりに焦点を当てて、不公平じゃないか」とか、「女性ばかり昇進して、男性のポストが減る」など色々な声が遠回りをして聞こえてきた。上司は上司で「会社が決めたことだから」で終わってしまう…。

 一方で、入社したての若手社員からも、なぜジェンダーダイバーシティ?という声が聞こえてきた。ダイバーシティで女性に焦点を当てることにピンとこないのだ。なぜなら、学生時代は性別で何か大きなギャップが生じることは無かっただろうし、大学によっては、性別に関係なく、色々な国籍の人たちと触れ合う機会があったり、意見を交わす経験を多くしたりしてたから…。だから、なぜわざわざ、ダイバーシティジェンダーギャップに取り組むのかが分からないのである。

<次回へ続く>

営業本部でのダイバーシティ推進活動 5

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 並行して進めていた営業本部のダイバーシティ戦略は、外部要因、本社との関連性なども考慮して策定していった。

 まず、ビジョンとして、近い将来(具体的には5年後をイメージ)にどの様な環境になっていたいのかを思い描き、オブジェクティブ(目標)を設定し、それを達成するための戦略を作成した。詳しい内容は割愛するが、イメージというか方向性は以下の感じだったと記憶している。

 ビジョンは、営業本部メンバー及び美容部員がそれぞれ価値を置かれ、個性を尊重され、発揮することにより、一人ひとりが最大限能力を発揮できる環境を実現し、ビジネス成長につなげること。

 目標(オブジェクティブ)は、各階層における男女比率を採用市場の男女比率に合わせ、女性の離職率を男性と同等にすることだった。もう少し説明を加えると、我々が求める総合職採用市場の男女比率が仮に男性55、女性45であったとすると、係長・課長・部長の各階層においてもその比率を実現するということである。また、離職率に関しても男性のそれと同等にすることが目標であった。必ずしも比率を半々にするとか、離職率をゼロにするというわけではなく、採用・昇進・定着率において男女間の不公正なギャップを無くすということだったと記憶している。

 戦略に関しては5つほど策定したと思う。ダイバーシティの正しい理解を組織内で推進し、ダイバーシティを育む文化を育成すること(その中には管理職のトレーニング等が含まれることになる)や、メンターシップや女性社員のネットワークを活性化するとか、将来の女性リーダーを育成する活動を行うとかあった。他に、ワーク・ライフ・バランスの推進とか採用に関する戦略もあったと記憶している。

 それぞれの戦略には、より詳細な行動計画を作成し、成功指標、期限、実行担当者を決め、進捗状況を毎月確認していった。予定通りであれば緑、遅れがちな場合は黄色、進んでいない場合は赤と色分けをして、一つひとつの対応を検討していった。

 もう一つ大事なことなのだが、ダイバーシティの組織貢献は、全社的にその部門の責任者の評価の重要な一つと位置付けられていたので、戦略策定、および実行段階においても徹底的に確認が行われたのは、ダイバーシティ担当者としてプレッシャーもあったが、トップのコミットメントがあったのは進めていく上で非常にやりやすかったことを覚えている。

<次回へ続く>

営業本部でのダイバーシティ推進活動 4

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  ダイバーシティを推進していく上で、組織も個人も柔軟性(フレキシビリティ)を持つことが重要であると思う。

  もちろん会社として就業規則等で、育児休業期間を延長するとか、在宅勤務制度を導入することなど制度の充実も重要だと思うが、本当に重要なのは、それを活用できる環境を整えることである。働きやすい素晴らしい制度はあるけれど、その制度をいざ利用したいと手を挙げることに、とても勇気がいる職場環境では十分とは言えない。「えっ、男性育休取るの、この忙しい時期に…」的な一言がどれだけ本人に影響を及ぼすか、少なからず部下を持つ立場の人は、意識しなければならない。あるいは「そう言われるに決まってるから相談したくない」なんて状況は、特に憂慮されなければならない(これらに関しては別途詳細について書きたいと思う)。

   女性社員に限らず、上司と部下の信頼関係を築き上げることは、本人の能力を導き出すためにも非常に重要である。制度の充実化よりも優先順位は高いのではないかと思う。そのためには具体的に何が必要か?

   「はいこれです!」と一言で言い切れる特効薬はないが、まず第一にコミュニケーションの質を上げることではないだろうか。

 前回のブログで書いた、「セクハラではないか」とか「上司たちの酒の肴(話題)にされるのではないか」という懸念は、結局のところ、コミュニケーション(あるいはその能力)の不足から来るもので、上司が部下を持つ立場になった時に、正しいコミュニケーションに関するトレーニングを受けていないと、自分なりのコミュニケーションスタイルや、あるいは自分が部下であった時の上司を思い描いて、部下との接し方を選んでしまいがちである。今まではそれでうまくいったかもしれない。なぜならば、自分が男性で上司も男性だったからだ。だから、そのスタイルで女性の部下とコミュニケーションをとった時に、なんとなくしっくりこないことがあっても、それは自分ではなく(マイノリティである)部下の方に改善の余地がある、なんて思ったりすることもあるのだ。だって自分も、多くの他の部下もそのコミュニケーションがしっくりいっていたから…。

 ダイバーシティを推進してイノベーションをビジネスに吹き込みたいのであれば、上司は、よりこのコミュニケーションの多様性をスキルとして身につけること意識する必要がある。

  一方で、組織は、個人任せにするのではなく、そのスキルを上司一人ひとりが身に着けられる様に、トレーニングを提供し管理職を育成していく必要がある。

 結果として、性別、国籍等に関係なく様々な個性を持った社員の能力が引き出せる様になるひとつの大きなきっかけとなるはずだ。

 ダイバーシティを推進していく上での成功の鍵は、直属の上司が握っていると言っても過言ではない。

<次回へ続く>

 

営業本部でのダイバーシティ推進活動 3

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 それからあれこれ出てきた話をまとめて、翌月の上級管理職の会議に臨んだ。

 当時並行して営業本部のダイバーシティ戦略を作成していたので、それの説明をする前に前回の宿題として、「個人面談で部下の女性社員にプライベートを聞くのはセクハラか否か問題」に関して、まとめたことを発表した。

 当時の上級管理職は、米国本社での勤務経験がある人などを除いて、今まで女性の上司の下で働いたことはないし、女性の部下をまだ持ったことがない人もいた。

 また、「仕事は仕事、プライベートはプライベート」的なけじめを大事にしている人も結構いたように記憶している。だからプライベートの事は男性にも聞かないし。もちろんそれが間違っているという訳ではない。

 ぼくは、その人たちの前で「女性社員は、プライベートも含めてのワーク・プランを上司とできるとより深いキャリア・ディスカッションや行動計画を立てることが出来るのではないかと期待している人が多い反面、上司にプライベートの事を話すことに関して不安を持っている人も少なくない」と先月の会議の宿題に対して説明をした。

「要するに信頼している上司にプライベートの予定などを含めたキャリア・プランの話をすることは問題ないが、信頼していない上司にするのは抵抗があるということです。上司と部下の信頼関係の構築に多くの機会が残っているということが分かりました」

 しばらく沈黙が続き、ある部長が質問をしてきた。

「じゃあ、具体的に今回の類はどうしたらいいんだ?」

 ぼくは、彼女達との会議を終えてからずっと考え続けていたことを話した。要約すると次の通りだ。

    プライベートを含めてのディスカッションをするかどうかは部下が決める。上司は、将来のキャリアについて話をしたいが、プライベートも含めて理解しておいた方がより深い議論ができると思うけど、〇〇さんはどう思うかと尋ねてみる。

    本人が、必要だとと思えば話をしてくるだろうし、現状特に必要ないのであれば話をしないかもしれない。また、必要だと思ったとしても、信頼できなくてしたくない人もいるかもしれない。

 個性を尊重するというのがダイバーシティにおいては重要なのだが、尊重するとは、相手の意思や状況を理解するために深い関心を寄せる事が重要だと思う。関心は寄せるが過干渉はしない。無関心とは大きく違う。そのような上司の振舞いが、女性の部下だけでなく、部下の一人ひとりが、上司(ひいてはそれを包括する会社)に価値を置かれていると感じる事になるのではないだろうか。

<次回へ続く>